ごあいさつ

ホームページ開設秘話

富士夫の型破りでびっくり箱みたいなホームページにようこそおいでくださいました.

最近では,ホームページをもっていない人のことを「ホームレス」と呼ぶのだそうです.1996年9月まで私は正真正銘の「ホームレス」でした.それまで,私が「ホームレス」だとわかると,けげんな顔をされ続けてきました.コンピューター関連の新技術にはダボハゼみたいに飛びつく腰の軽い人間だと誤解されているようです.正直なところ,「腰が軽い」どころか完全に「腰が引けて」いました.三ヶ月ひと昔とかいうインターネットの激烈な変化に追随していくのは,至難の業です.

しかし,かつて私と同室だったSteffen Weber氏などは,今どき「ホームレス」なんて文明人でないとまで言い切っていました.ピテカントロプスやシーラカンス扱いされるのは悔しいので,いつかきっとホームページをこしらえようと考えていました.確かに理工系の人間というのは,本来,こういった新しい技術を積極果敢に活用していく能力に長けていることが望ましいのは言うまでもありません.私は人と張り合おうとか這いあがろうとかいう上昇指向をほとんど持ち合わせていませんが,コンピューター関連の技術で遅れをとることにはこの上ない屈辱を感じる方です.少なくともこの点に関しては,普通の人と価値観が完全に逆転していて,しかもそのことを誇りに思っています.しかし目前に山積みになっている仕事や雑用を片づけていくのが精一杯で,とてもその精神的余裕がありませんでした.

ところが「化学と工業」の1997年1月号に「インターネットを通じた情報交換とソフトウェア配布」という仰々しいタイトルの解説記事を執筆する羽目に陥ってしまいました.この依頼には困惑しましたが,私がインターネットの相当なパワーユーザーなのは事実です.そこで粉末中性子回折による構造解析の実行段階でインターネットの諸機能をどのように活用しているかということに的を絞り,どうにかこうにか脱稿しました.

その原稿を日本化学会に送った直後,たまたま藤原博文氏の天網恢々を読みました.藤原氏に言わせると,情報発信の実績も技術もない「ホームレス」がインターネットについて分かったような口を利くなどもってのほかだそうです.たしかにインターネットに関する本や文章を読んでも,筆者のホームページのURLが記されていることのほうが少ないです.私はこの痛烈な批判に周章狼狽・赤面し,遅ればせながら,独学で自分のホームページづくりにチャレンジしました.プログラマーの誇りにかけて手軽なホームページ製作支援ツールはいっさい使わず,HTMLのジャングルに足を踏み入れたのです.

これが本ホームページ開設の舞台裏です.ともあれ,その後「化学と工業」の記事を多少手直しした際に,私がちゃんとホームページを公開していることを明記するとともに,ホームページの一部をカットに用い,藤原氏の批判をかわすことにしました.さすがにそんな泥縄式の対応だけでは良心がとがめたので,実態・補足説明の中に原稿を入れ子にしてこのホームページで公開したというわけです.問わず語りに内情をみずから暴露してしまいましたが,他の半可通の執筆者たちに比べたら,恥を知っているだけ良心的だと思いませんか?

本ページの現状と未来

現段階ではこのホームページは,とりあえずHTML,CGI,Animated GIF,MIDI,Java,VRML,PDF(Portable Document Format)などのテクニックを習得するための実験場をこしらえました,という程度の発展途上頁にすぎません.弁解になりますが,研究は他人まかせの「降りちゃった人」や窓際族でもないかぎり,私くらいの年齢の研究労働者には,結構に趣向を凝らす暇などないのです.「時間がある奴が勝ち」という世界で老骨にムチ打ったところで,しょせん勝負になりません.

前向き,建設的な姿勢も感じられなければ,人が寄りつきません.本ホームページは,粉末回折関連の多彩な情報を提供するとともに,自己の研究成果を積極的にアピールしていくための強力無比な手段として徹底的に活用していくつもりです.さらに,ハブページ化を目指し,他の便利なホームページへのリンクをことに充実させる方針です.いわば個人的なブックマークの公開ですね.私が興味あるサイトに偏ってはいますが,一種のデータベースとして活用できます.総合能力ならぬ底の抜けた雑合能力を発揮するよう心がけます.このホームページからなにやら得体の知れない,一種の執念のようなものを感じ取っていただければうれしいです.

ホームページ製作のすすめ

これまで研究者にとって自己の研究成果を公開・宣伝する場は研究集会および紙上発表だけでした.状況は変わりつつあります.今どき,別刷やプレプリントを郵送しているのでは時代遅れです.WWWを使えば,即座かつ経費をかけずに,場合によってはマルチメディア機能を活用し,世界に向けて最新の研究成果をハイパーテキストとして発信しうるのです.私は研究成果をWeb上で展開するという潮流を先取りしていくつもりです.出張旅費が限られている現状では,WWWによる研究紹介は結構,現実的・経済的な問題解決法なのかもしれません.

それに,既成のメディアに頼れないような科学技術関係のマイナーな情報でも,ほとんどコストをかけることなく公開・共有できます.アドビシステムズのAcrobatによりPDFファイルを作成すれば,印刷物に匹敵する品質の電子ドキュメントとして配信できます.専門書を自作し,公開するのも有意義です.しかも研究の進展に応じていつでも加筆修正したり,内容の一部をコピー・ペーストしたりすることが可能です.読者が必要な部分だけを印刷したり,メモを貼り付けたりという小回りもききます.画期的な新出版環境が出現としたといってよいでしょう.本ホームページではPDFを利用した電子配信技術を徹底的に活用していくつもりです.

公式な業績とはみなされないから,面倒くさいから,コンピューターは苦手だから --- といってホームページ製作を敬遠していると,情報革命の波に乗りそこなってしまいます.地道に研究にだけ専念し,学会・誌上発表さえコツコツ行っていればいいという,のどかな時代は幕を閉じつつあります.そんなことでは座して死を待つようなものでしょう.映像,アニメーション,音声などのマルチメディア技術やハイパーリンクは従来の発表手段(OHP,ポスター,論文)ではまったく利用できません.論文を書いたり,講演したりするのはすべての研究者に共通する基本的に重要な仕事ですよね.講演はその場に居合わせた人しか聴講できません.限られた時間で駆け足で話しても聴衆には十分理解してもらえない可能性があります.論文を学術雑誌に投稿したとしても,それを購読していない人にとっては入手が面倒です.CirculationのよくないProceedingsはその会議に出席した人しか読めません.そこで,ホームページでの情報提供が大いに役立つのです.

企業の研究者はともかく,大学や国公立の研究所の研究者にとっては,ホームページの作成も必要不可欠な研究活動となる可能性があります.私はこれまで,自分の研究を通じて獲得したノウハウや技術は「企業秘密」として隠匿せず,原則としてすべて公開してきました.ここまで出し惜しみしない研究者も珍しいです.本ホームページも例外でなく,貴重な情報のオンパレードです(無駄で役に立たない情報も合間合間に散りばめてありますが...).

ホームページを開設してから日も浅いうちに,自分自身が一種のデータベースとしてひんぱんに利用するようになったばかりか,日頃からHTML文書をメモ代わりに使っておけば,レビューなどを執筆する際のネタを引き出すための「貯金箱」,「貯水池」として役立つことに気づきました.こういう機会の多い私としては大助かり.とにかく,ホームページの効用は想像以上に大きいです.いずれ,ホームページも開設していない(あるいは,開設できない)ようでは研究者として失格とみなされ,アクセスカウンターが一種のimpact factorとして使われる時代が到来するかもしれません.

私には公開できるようなネタなどなにもない,と言われるかもしれません.そんなことはありませんよ.マイナーな科学技術情報を流すのにインターネットはうってつけです.縁なき衆生にとっては塵芥であっても,一部の人から見れば宝物というような情報は山ほどあります.専門用語集でもリンク集でも専門知識の初歩的な説明でもかまわないのです.要は知識や情報を共有しようという理想と意気込みの問題です.

あらゆる分野で技術革新が着々と進展しています.とくにインターネットを含むIT(Information Technology)の世界は途方もないスピードで変貌しつつあります.過去の実績と現在の地位の上にあぐらをかき,会議,書類書き,雑用に精を出していると,研究の現場からは粗大ゴミとして廃棄処分されかねません.日本の怠学享受,でなかった,大学教授の約半分は,少なくとも研究という面では化石同然の存在といって過言でないでしょう.20代や30代前半の若手でさえ,大半は落ちこぼれてしまうのが現実です.最新技術を率先してマスターし,若い人たちから馬鹿にされるどころか,むしろ彼らを圧倒し,尻を叩き続けるよう心がけていきたいと存じます.いつまでもちこたえられるか,わかりませんが

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